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電話の音。誰かの話し声。となりの席のキーボード。
どれも当たり前の音のはずなのに、夕方には頭の芯がじんとしています。
イヤホンをつければ、たぶん楽になる。でも、つけた瞬間に「感じが悪い」と思われないだろうか。
声をかけられて気づかなかったら、協調性のない人だと思われないだろうか。
そう考えているうちに、今日もつけないまま一日が終わりました。
我慢したまま働き続けると、家に帰るころには何も考えられなくなります。
ただ、仕事中のイヤホンは「やめるか、我慢するか」の二択ではありません。
耳をふさがないという、三つ目の選択肢。
この記事では、まず「なぜ非常識と言われるのか」をはっきりさせます。そのうえで、耳をふさがないイヤホンなら何が変わるのかを書きます。
介護の現場に二十年いました。私が苦手だったのはナースコールの音です。
仕事中のイヤホンが非常識と言われる、3つの理由

仕事中のイヤホンが非常識と言われるとき、その理由はだいたい三つに絞られます。
マナーの問題として語られることもあります。ただ、実際に挙がる理由の多くは「仕事に支障が出るのではないか」という心配です。
声をかけられても気づかない
仕事中にイヤホンをつけていると、声をかけられても気づかないことがあります。これが、非常識と言われるいちばん大きな理由。
呼んだ側からすると、無視されたように見えます。二度、三度と続けば「話しかけにくい人」という印象になる。
本人にその気がなくても、そう受け取られてしまいます。
電話や来客への反応が遅れる
仕事中のイヤホンは、電話や来客への反応も遅らせます。鳴っている音に気づくのが、周りより一拍おくれるから。
一拍の遅れは、自分ではほとんど気になりません。ただ、隣で見ている人には見えている。
「あの人はいつも出ない」と思われるのは、この積み重ねです。
音が聞こえないと、協調性がないように見える
耳をふさいでいる姿は、それだけで「話しかけないでほしい」という合図に見えます。仕事中のイヤホンが協調性のなさと結びつけられるのも、このため。
集中したいだけなのに、人を拒んでいるように見えてしまう。ここがいちばんしんどいところだと思います。
仕事中のイヤホンは、法律で禁止されているのか

「注意されたけれど、あれは理不尽だったのでは」と感じている人もいると思います。ここをはっきりさせておくと、少し気が楽になります。
直接禁止する法律はない
仕事中のイヤホンを禁止する法律は、ありません。イヤホンをつけて働いたからといって、それ自体が法律違反になることはない。
つまり「イヤホン=ルール違反」ではありません。ここは安心してもらって大丈夫です。
決めているのは、会社の就業規則
では、誰が決めているのか。会社です。就業規則や、部署ごとのルール。
だから同じ仕事でも、職場が変われば答えも変わります。在宅勤務なら何も言われないことが、来客のある窓口では通らない。どちらが正しいという話ではなく、事情が違うだけ。
注意されたときに、確認しておきたいこと
もし注意されたら、知りたいことが一つあります。それはルールとして決まっていることなのか、それともその人の考えなのか。
決まっているなら、従うしかありません。決まっていないなら、話してみる余地は残っている。どちらにしても、確かめてからのほうが気持ちは落ち着きます。
なお、規則の解釈で困ったときは、職場の担当部署に聞くのがいちばん早い。この記事は一般的な整理にとどめています。
HSPが仕事中にイヤホンを使いたい、本当の理由

ここまでは、周りから見た話でした。ここからは、つけたい側の話をします。
仕事中にイヤホンをつけたい人が、みんなさぼりたいわけではありません。つけないと、夕方まで持たない。そういう人もいます。
キーボードの音も、咀嚼音(そしゃくおん)も、電話の音も、同じ大きさで入ってくる
HSPが職場の音をつらく感じるのは、音を選択するのが苦手だからです。キーボードを打つ音も、となりの咀嚼音も、遠くで鳴っている電話も、全部が同じ大きさで入ってきます。
音量を下げるつまみが、自分にはついていない。そんな感じに近いです。
うるさい場所が苦手、という話ではありません。どの音にも同じだけ反応してしまうので、耳が休むタイミングがない。
我慢していると、夕方には何も考えられなくなる
私は介護の現場に二十年いました。いちばん苦手だったのが、ナースコールの音です。
鳴った瞬間に、体がビクッとする。自分が呼ばれたわけではなくても、反応してしまう。鳴りやまない日は、鳴っていないときまで鳴った気がしていました。
ひとつひとつは、小さなこと。ただ、それが一日続くと、夕方には人の話が頭に入らなくなっていました。
「気にしすぎ」で終わらせられてきた
音がつらいと、職場で言ったことがあります。返ってきたのは「気にしすぎ」でした。
悪気はなかったと思います。ただ、その一言で、もう言えなくなりました。
モモさん気にしすぎだよって言われると、それ以上なにも言えなくなります。



私もそうでした。言い返せないから、我慢するほうを選んでしまうんですよね。
音がつらいのは、わがままではありません。感じ方が人より強いだけで、あなたが弱いからでも、気にしすぎだからでもない。
イヤホンをつけたいのは、仕事から逃げたいからではありません。夕方まで働き続けるためです。
仕事中のイヤホンは、やめるか我慢するかの二択ではない


ここが、この記事でいちばん伝えたいところ。
多くの人が「イヤホンをあきらめるか、音を我慢するか」の二つしかないと思っています。でも、もう一つある。
非常識と言われる理由は、全部「気づけないこと」だった
もう一度、最初に挙げた三つを並べてみます。
– 声をかけられても気づかない
– 電話や来客への反応が遅れる
– 音が聞こえないと、協調性がないように見える
三つに共通しているのは、どれも「周りの音に気づけなくなること」を心配している点。
つまり引っかかっているのは「イヤホン」そのものではなく、「耳をふさぐこと」です。
耳をふさがなければ、「気づけないこと」は起きにくくなる
では、耳をふさがなければどうなるか。周りの音が入ってくるので、呼ばれれば気づけます。電話が鳴れば聞こえる。話しかけられたら、その場で返事ができる。
イヤホンをやめる必要も、音を我慢する必要もありません。



耳をふさがなければいい、なんて考えたこともなかったです。



私も長いあいだ、イヤホンをやめるか我慢するか、どちらかだと思っていました。
もちろん、これで全部が解決するわけではありません。
たとえば「仕事中に音楽を聴くこと自体がよくない」と考える人はいます。これは耳をふさがない型にしても変わりません。気づける・気づけないの問題ではなく、気持ちの問題だから。
それに、介護や看護、接客、運転、製造の現場のように、そもそもイヤホンという選択肢がない仕事もあります。その場合は、耳栓や席の工夫など、別の方法を考えたほうが早いです。
音そのものを減らす方法は、こちらにまとめています。HSPの音対策。通勤と職場と家で、実際に使い分けているアイテム3つ
耳をふさがないイヤホンがある
耳をふさがないイヤホンは、実際に売られています。オープンイヤー型と呼ばれる種類。
かたちはいくつかあります。耳たぶに挟むイヤーカフ型。耳にかけて、耳の穴の少し前で鳴らす耳かけ型。首にかけるネックバンド型。骨を振動させる骨伝導型もこの仲間です。
どれも共通しているのは、耳の穴をふさがないという点です。
耳をふさがないイヤホンで、周りの音はどこまで聞こえるのか


呼びかけには気づける
耳をふさがないイヤホンは、耳の穴が開いたままです。周りの音がさえぎられないので、名前を呼ばれれば気づけます。ふさいでいないから聞こえる。
ただし、音漏れはする
耳をふさがないイヤホンは、音漏れします。耳の穴を密閉していない以上、音は外にも出ていく。
Googleの検索結果でも、耳をふさがない型は一般的なイヤホンより音漏れしやすい傾向があると説明されています。
ただし、音漏れを抑える工夫をしている製品もある。そこは後で触れます。
静かなオフィスでは、音量を下げる必要がある
音漏れがある以上、静かな場所では音量を下げることになります。しんとしたオフィスで大きな音で聴けば、周りに聞こえる。
逆にいえば、ある程度の生活音がある職場のほうが向いています。人の出入りがある、機械音がしている、そういう場所。
私の場合、夜勤で一人のときだけ音楽を流していた


ここからは、ここだけの話として読んでください。
胸を張って言えることではありません。誰かにすすめられる話でもない。ただ、同じところで迷っている人には、たぶん役に立ちます。
先に書いておくと、私の職場にはイヤホンについての決まりがありませんでした。禁止もされていないし、許可されてもいない。そういう職場も、実際にあります。
パッド交換のあいだ、気持ちを落ち着かせたかった
夜勤でパッド交換をしているあいだ、私はリラックスできる音楽を流していました。
理由は単純。そのほうが、気持ちが落ち着くからです。夜中に一人で同じ作業を続けていると、だんだん気持ちがささくれてきます。音楽があると、リラックスできます。
自分が落ち着いているほうが、手も丁寧になります。自分のためであり、結果として仕事のためでもありました。
一人で動く時間なら、誰にも気を使わずにすむ
私が音楽を流していたのは、一人で動いている時間だけです。
日勤で人がいるときには、つけていない。誰かに話しかけられるかもしれない場所で使えば、「気づけないこと」がそのまま起きるからです。
ただし、物音に気づけることが条件だった
これだけは譲れませんでした。何か物音がしたときに、気づけること。
夜勤帯に一人で動いているということは、何かあったときに気づけるのが自分しかいないということです。利用者さんの居室から聞こえる音、廊下の気配、遠くのコール。そこが聞こえない状態でケアに入るわけにはいきません。
だから、耳をふさぐタイプは最初から選べませんでした。音楽を聴きたいけれど、耳はふさげない。私が耳をふさがないイヤホンを気にしているのは、この一点です。
ここに書いたのは、あくまで私の職場での話です。イヤホンを使っていいかどうかは、職場によってまったく違います。この記事は、同じようにすることをすすめるものではありません。
使うかどうかは、ご自身の職場のルールを確かめたうえで、ご自身で判断してください。何かあったときに責任を取れるのは、その場にいる自分だけです。
気分転換に外を歩くときも、耳をふさぐのが怖い時がある


仕事の話が続いたので、仕事以外の話もします。同じことが起きるからです。
私は気分転換に歩いたり、体を動かしたりします。そのときも音楽は聴きたい。でも、耳をふさいでいると怖い時があります。
後ろから来た自転車に、通り過ぎてから気づいた
歩いているとき、後ろから来た自転車に気づけなかったことがあります。気づいたのは、横を通り過ぎたあとでした。
ぶつかったわけではありません。何も起きませんでした。ただ、自分の真後ろに何かがいたことに、最後まで気づいていなかった。
車の音に気づけないのが、いちばん気になる
自転車よりも気になるのは、車です。
音楽を聴いていると、近づいてくる車の音が入ってきません。曲がり角や、歩道のない道では、それが不安。目で見て確かめればいい話なのですが、耳が使えないぶん、気を張り続けることになります。
落ち着くために音楽を聴いているのに、別のところで気を張っている。それでは意味がありません。
外では、聞こえたままのほうが安心できる
外を歩くときは、音楽よりも安全第一。
そう考えると、外でも結論は同じでした。音は聴きたい。でも耳はふさぎたくない。職場でも、外でも、私が求めているものは変わりませんでした。
NTTの技術でつくられた、耳をふさがないイヤホン
耳をふさがないイヤホンはいくつも売られています。そのなかで私が気になっているのが、NTTソノリティの「nwm(ヌーム)」です。
まだ使っていません。先に書いておきます
私はnwmを持っていません。買っていないので、音がよかったとも、つけ心地がよかったとも書けません。
ここから書くのは、メーカーが公表している仕組みと数字。そして介護の現場にいた人間として気になった点だけ。
耳をふさがないのに、音漏れを抑える仕組みがある
nwmは、NTTが開発したPSZという技術を積んでいます。音の波を使って、外に漏れる音を抑える仕組み。メーカーはそう説明しています。
ここではっきりさせておきます。これは「音漏れしない」という意味ではありません。耳の穴を密閉していない以上、音は漏れる。抑える工夫がされている、というだけです。
私がこの製品を気にしているのは、まさにそこです。耳をふさがないという条件を変えずに、音漏れという弱点に手を打っている。
職場で使うなら、首にかけるタイプは選ばない
nwmには、耳にかけるタイプと、首にかけるネックバンドタイプがあります。
介護の現場で使うなら、首にかけるタイプは選びません。首にかけたものは、掴まれます。引っかかります。
これは音質や値段とは関係のない話です。現場によっては、使用がむずかしい。同じ理由で、看護や、小さな子どもを相手にする仕事でも同じことが言えると思います。
外を歩くときや体を動かすときなら、首にかけるタイプも選べます。ずれにくく、防塵・防水の基準も高いものもある。使う場所で分けて考えるのが、いちばん安全です。
使う時間が短いなら、バッテリーで選ばなくていい
私が夜勤で音楽を流していたのは、パッド交換のあいだだけです。時間にすると三時間ほど。
このくらいの使い方なら、バッテリーの長さで悩む必要はありません。耳にかけるタイプは本体だけで約八時間、充電ケースを使えば最大三十二時間。首にかけるタイプでも最大十時間です。どれを選んでも足ります。
長く使えることを理由に、高いほうを選ばなくていい。自分が実際に使う時間から選択したほうが、無駄がありません。
形と値段には幅がある
nwmには有線のものから、耳にかけるもの、首にかけるもの、頭にかけるヘッドホンまであります。値段は一万円台のものから、四万円近いものまで。
※販売店によって価格が変わります。買う前に見比べてください。
耳をふさがないイヤホンが向かない人


ここまで読んで「よさそうだ」と思った方もいると思います。ただ、向かない人もはっきりいる。買ってから気づくと、お金も気持ちも損をします。
とても静かなオフィスで働いている人
耳をふさがないイヤホンは、しんとした場所には向きません。音漏れを抑える工夫はされていても、密閉していない以上、音は外に出るからです。
キーボードの音しか聞こえないような部屋では、音量をかなり下げることになります。それでは、そもそも音楽が聞こえません。
反対に、人の出入りがある、機械音がしている、そういう職場なら合います。自分の職場がどちらなのかは、買う前に思い出しておいてください。
音をしっかり消したい人
音を聴きたいのではなく、音を消したいのであれば、耳をふさがないイヤホンは逆効果です。周りの音が入ってくる作りなので、消したい音も一緒に入ってくる。
その場合に向いているのは、耳栓か、耳をふさぐタイプのノイズキャンセリングです。
耳をふさぐタイプとの使い分けは、こちらに書きました。HSPにおすすめのイヤホン。耳をふさぐタイプと、挟むタイプの使い分け
目的が「聴きたい」なのか「消したい」なのかで、選ぶものは正反対になります。ここを取り違えると、どちらを買っても後悔します。
職場がはっきり禁止している人
就業規則でイヤホンが禁止されているなら、耳をふさがないタイプでも同じです。ルールが見ているのは形ではなく、イヤホンをつけているという事実だから。
その場合は、耳栓に切り替える、席を替えてもらう、休憩の取り方を変えるなど、別の方法を考えたほうが早いです。禁止されている場所で無理を通しても、いいことは何もありません。
仕事中のイヤホンについて、よくある質問


- 仕事中にイヤホンで音楽を聴いたら違反になりますか
-
仕事中にイヤホンで音楽を聴くこと自体を禁止する法律は、ありません。ただし、会社の就業規則や業務命令で禁止されている場合は、それに従う必要があります。法律ではなく、職場のルールで決まる話です。
- 業務中にイヤホンを使うと、どうなりますか
-
業務中にイヤホンを使うと、多くの場合は口頭での注意にとどまります。ただし、繰り返したり、呼びかけに気づかず業務に支障が出たりした場合は、評価に影響することがあります。
- 職場でイヤホンをつけたまま仕事をするのは、どうなのでしょうか
-
職場でイヤホンをつけたまま仕事をしてよいかどうかは、職場と場面によって変わります。来客や電話の対応がある席では、周りの音に気づけないことが問題になります。逆に、一人で作業する時間帯であれば、認められている職場もあります。
- 仕事中にイヤホンをしていて、バレない方法はありますか
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仕事中にイヤホンを隠して使う方法は、この記事ではおすすめしていません。髪で隠したり片耳だけにしたりしても、呼びかけに気づけなければ同じことが起きるからです。隠すことに気を使うより、職場のルールを確かめて、認められる範囲で使うほうが、結果として気持ちが楽になります。
まとめ。仕事中のイヤホンは、非常識かどうかより自分に合うかで選ぶ


仕事中のイヤホンが非常識と言われる理由は、三つでした。声をかけられても気づかない。電話や来客への反応が遅れる。協調性がないように見える。
三つとも、責めているのは音楽ではなく耳をふさぐことでした。だから、耳をふさがなければ起きにくくなります。やめるか我慢するかの二択ではありません。
もちろん、全部が解決するわけではありません。音漏れはします。静かなオフィスには向きません。禁止されている職場では使えません。首にかけるタイプは、介護の現場では危ないと思います。
それでも、音がつらいことは、わがままではありません。
イヤホンをつけたいのは、さぼりたいからではない。夕方まで、そして明日も働き続けるためです。そのために道具を選ぶことは、後ろめたいことではないと思っています。
※販売店によって価格が変わります。買う前に見比べてください。
音を選べる日が、少しでも増えますように。
耳を守るのは、わがままではありません。









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